フリーランス・個人事業主 屋号のメリットと注意点

決め方に悩む屋号 ルールを知ってトラブルを避けよう

ライター事務所「つむぎや」のアキラ(@510tsumugiya)です。

「フリーランス・個人事業主 『開業届』提出の手順」の回でも少し触れましたが、個人事業主は「屋号」を使うことができます。

「屋号のつけ方」を規定した法律はありません。自由度が高いため、逆に決め方に悩む人も多いと思います。

何でもいいと言えばそうなんですが、適当に考えると会社法や商標法の絡みであとあと屋号が使えなくなったり、思わぬトラブルに巻き込まれたりすることも想定されるので、きちんとルールを知っておくことが必要です。

そもそも屋号とは「商業上の名」

国税庁のHPを調べると、

屋号(又は雅号)とは、個人事業者の方が使用する商業上の名のことです。

とありました。

ちなみに「雅号」とは、芸能人などが本名以外につける「芸名」をイメージしてください。作家のペンネームなどもそうですね。

ただ、個人事業主でも、必ずしも屋号を使わないといけない訳ではありません。個人名のみで活動している作家や写真家などもたくさんいますよね。

税務署に提出する「開業届」や「確定申告書」には屋号を記入する欄もありますが、実は空白でも受理されます

じゃあ、屋号を使うメリットって何なの? となりますよね。

でも結論から言うと、やっぱり屋号は使った方がいいと思います。

その理由を紹介していきます。

個人名でもOKだが、屋号で社会的信用アップ!

屋号を付けたほうがいい理由をまとめてみました。

個人名だと取引先に不安を与えがち

顧客は、あなたとのビジネスに際して、あなたが信用に値する人物なのかどうか見極めようとします。

「仕事を任せられる技量を持っているのか」という話ではありません。

それ以前の「あやしい奴じゃないのか」ということです。あなたには顧客の不安を払拭することが求められます。

ところで、あなたは世間に名前が知れ渡っている著名人ですか? 名前をネット検索すれば上位に出てきますか?

おそらく違いますよね。

そうであるならば、個人名だけで仕事をしていると、少なくとも初めて取引する相手からは、残念ながら「うさんくさい」と思われても仕方がありません

そもそも大手企業の場合、一般的な個人事業主とは取引をしないケースだってないわけではありません。

「屋号がないぐらいで、ガタガタ言う顧客なんていないでしょ」というのはあなたの理論。

重要なのは、相手がどう思うか、ですよね。

せっかく高いスキルがあっても、屋号がないだけで取引前から少しでもうさんくさい目で見られるようなことがあれば、つまらないです。

顧客に少しでも余計な先入観を与えたくないのであれば、屋号を活用しましょう。

屋号付きの事業用銀行口座を開設できる

個人事業主が金融機関で事業用の口座を開設した場合は、名義が「屋号+個人名」となります。

僕も作成しました。

屋号付きの事業用口座を開設するには、個人名義口座に比べそれなりの審査があり面倒です。

ですが「審査をクリアできる=社会的信用が生まれる」ということ。客観的な信用を生むためにも、ぜひ開設しましょう。

顧客が振込みをする際も、個人名義より屋号付き名義の方が、安心して振り込めるのではないでしょうか。

個人名義だと、脱税を疑う人だっているかもしれません……。

よく言われることですが、実務の面でも、事業用の口座を作っておけば資金管理がしやすくなります。個人名義口座をビジネスにもプライベートにも利用していると、どれを仕事で使ったのかごちゃごちゃになりがちです。

また、クラウド会計サービスの中には銀行口座とリンクしているものもあり、仕分け作業などを手伝ってくれるので、やっぱり事業用口座があれば便利ですよね。僕は「MFクラウド会計」です。ご参照ください。

さあ起業だ! と気持ちが盛り上がる

開業届を出す行為もそうですが、屋号を決めると「さあ、いよいよこの名前を掲げて独立だ!」と気持ちが高まります。

「そうでもない」と言われるとそれまでですが、人って意外とこんなところで気持ちが盛り上がったり、一区切りつけたりするものではないでしょうか。

屋号を決めるときの注意点とコツ

実際に屋号を考える際、いろいろ頭に入れておいた方がいいことがあるので、まとめてみました。

会社(法人)と誤解されやすいもの、「〇〇銀行」などはNG

屋号は、会社(株式会社や合同会社などの法人)ではなく個人事業主が使うものです。なので、会社と誤解されるような屋号は会社法の規定により禁じられています。

例えば、以下のようなもの。

「〇〇会社」
「〇〇法人」
「〇〇 Co(コーポレーション)」
「〇〇 Inc.(インコーポレイティッド)」
「〇〇 Co.Ltd(カンパニーリミテッド)」

このほか「信用の維持」を法律で義務付けられている特殊な業種の名称もアウト。具体的には、

「〇〇銀行」
「〇〇労働金庫」
「〇〇信用金庫」
「〇〇保険会社」

などです。これらの会社は、逆にこの名称を使わないといけないという規定があります。

商標登録されている名称もダメ

商標権とは、商標法に基づいて商標を独占的に使用するための権利。身近なところでは会社名やブランド名、商品名などで登録されています。

大企業の社名や商品名などは、完全に商標登録されていますね。「特許情報プラットホーム」のサイトでは、登録商標を検索できます。「この名称はひかかりそうだな」と引っかかるものがあれば調べてみましょう。

ちなみに、商標登録と同一ではないけれど類似しているものも問題視されることがあるので避けましょう。

どのみち「似たような名前で客をだましてやろう」というせこい人に未来はないと思いますが……。

屋号に使用できる文字と記号

屋号に使用できるのは、以下の文字・記号となっています。

・漢字
・ひらがな
・カタカナ
・ローマ字(大文字及び小文字)
・アラビヤ数字
・符号「&」(アンパサンド)
   「’」(アポストロフィー)
   「,」(コンマ)
   「-」(ハイフン)
   「.」(ピリオド)
   「・」(中点)

※ローマ字や符号は、商業登記規則などの改正(平成14年)により使用可能となりました。

※符号は,字句を区切る際に限り使えます。先頭、末尾の使用は不可。ただし「.」(ピリオド)は例外的に末尾で使えます。また、ローマ字で複数の単語を表記する場合に限り、語を区切るために空白(スペース)を使うこともできますよ。

同じ住所でなければ同じ屋号も可

昔は、同じ市町村内で同じ業種の商いをする場合、同じ屋号はつけられませんでしたが、現在は可能となりました。

現在は、まったく同じ住所で同じ屋号の場合だけがアウトです

逆に言えば、向かいのお店や隣の店が同じ屋号であっても、住所が違うので問題ないということになります。

となると、同じ名前の店舗が100件ぐらい固まっていても法律上は問題ないということに……。それが嫌な人は、商標権登録をしましょう! ありえませんが。

得するかもしれない?屋号の例を紹介

それでは、最低限度のルールが頭に入ったところで、さっそく屋号を考えてみましょう。

絶対ではないですが、こうすれば得するかも、というコツを紹介したいと思います!

顧客に興味を持ってもらえるか

例えば、初めて会う顧客と名刺交換した際、最初に目が行くのは屋号と名前でしょう。

「物語がある屋号」はいいですよね。「こんな経緯があって、この屋号にしたんです」と顧客に語れるようなもの。

素晴らしいエピソードではないですが、タイヤメーカー「ブリヂストン」の逸話が有名でしょうか。

創業者である石橋正二郎の名字「石橋」を英語にしてみたけれど(ストーンブリッジ)、どうも語呂が悪いので前後逆にした(ブリヂストン)という話。

なんてことはない話ですが、顧客との雑談でこういったネタがあれば、相手の印象にも残りやすいですね。

また、思い切った「珍名」もいいかもしれません。

株式会社の例になりますが「株式会社総務部」ってありますよね。これはインパクトがある。さらに、何の会社なのかも推測できます。

「空飛ぶ株式会社」というのもありました。飛べなくなったのか、どこかに買収された記憶がありますが……。

とにかく、屋号は広く知ってもらうきっかけになればしめたもの。珍名というだけで、取材が殺到するケースもあります。

自己責任ですが、思い切ってとびきり変わった屋号もいいかもしれません。

仕事の内容が一発で分かる

王道を行く、最もオーソドックスな屋号です。例えば

「〇〇弁護士事務所」
「〇〇美容室」
「〇〇一級建築士事務所」
「〇〇デザイン事務所」

など。事業内容が一発で分かるので、余計な説明が要りません。

例に挙げた弁護士や一級建築士など、資格名に強いアピール力がある業態であれば非常に有効でしょう。

覚えやすい 忘れにくい

一般的でない横文字や、とても読めないような漢字を使った屋号ってありますよね。単純に覚えにくくて不便です。

あえて具体名は挙げませんが、聞いたこともない英単語とか、ヤンキーの「夜露死苦!」みたいな当て字の社名とか。

ユニークで個性的な屋号も、一つ間違えれば単なる独りよがりになってしまうので、そこは気を付けたいです。

珍名も勧めておきながら、どっちなんだと言われそうですが……。

漢字を使うのかひらがななのか、アルファベットなのかカタカナなのか。表記についても実際に見比べたりして決めたいですね。言葉は表記によって随分表情が変わります。

聞き取りやすい

サラリーマン時代、電話がかかってきて、何度聞き直しても聞き取れない屋号がありました。

これもあえて具体例は挙げませんが、聞いたことがない長いカタカナだったと記憶しています。いまだにきちんと思い出せない……。

取引先などに電話して「え?」「社名、もう一度お願いできますか?」「ちょっと聞き取りにくかったのですが……」と何度も何度も言われると、こっちもいやな気分になるし、相手も申し訳ない気分になってしまいます。

個人的に、これは結構、大事かなと思います。

「A」「あ」から始まれば目立つ?

起業してある程度実績が出てくると、取引をした相手がHPで「主な実績」「主な取引先」といった名目で、こちらの屋号を取引先リストに入れ公表してくれる場合があります。

「つむぎや」のHPでいえば、こちらのページがそうですね。ご参照を。

これら取引先を掲載する順番ですが、何らかの根拠を持たせないと、相手によってはガタガタ言われることがあります。

昔ながらの「うちの会社の方が上じゃないの?」みたいなケースですね。うっとおしいですが、ないわけではありません。

そこで、通常は「あいうえお順」または「ABC順」といったルールを設けるわけですが「あいうえお順」が多いようです

このページは、なんだかんだ言ってもその事業者の実績を示す大切なページなので、閲覧率が高いです。

そうすると、やはり上位の名前がよく見られますよね。一ページ目に載っているところ。「愛川ライター事務所」という名前なら、一番上も狙えそうですね。

ページをスクロールして下の方にようやく屋号が登場するようでは、なかなか見えてもらえないかもしれません。

以上のことを考慮すると、「あ」とか「A」で始まる屋号は、結果的に誰かの目に留まる確率が、ごくわずかですが高まりそうです。

認知度アップを徹底するのであれば、頭の隅に入れておいてもいいかもしれません。

SEOの観点から有名どころとの類似は避ける

HPなどを作成し、インターネット経由での受注を最大化したいのであれば、SEO(検索エンジン最適化)の観点から、ほかの人と被らない屋号がベストでしょう。

大手企業や有名人と被るような名称であれば、個人事業主レベルでは検索パワーで負けてしまいます。一生一ページ目など上位表示されることがないかもしれません。

とはいっても、考えた屋号をよくしらべると有名どころとダブっていた! と後になって分かることも想定されます。そういったことを避けるために、考えた屋号は一度、検索エンジンにかけてみることをおすすめします。

屋号 結局は好きなものを!

屋号はこう付けよう! といろいろ書いてきましたが、個人的には、結局のところ自由に好きな屋号を付ければいいのではないか、と感じています。

意味不明だろうが、SEO的に最悪だろうが、「ん」から始まろうが、屋号は一生付き合っていく相棒のようなものなので、やっぱり本当に気に入ったものでないといけないと思うんです。

いまや有名になったベンチャー企業で、訳の分からない屋号なんかたくさんありますよね。

かの有名な「Apple」だって「リンゴ」のことでしょう? SEOなんか最悪だったでしょうね。

ちなみに「つむぎや」の場合……

僕の屋号は「つむぎや」です。

実は、うちの妻が考えました。

半年間ほど独りで考えていたんですが、どれもしっくりこなくて、じりじりとした日が続いていました。

離島でライターとして起業するのは珍しいので、そこをアピールした方がいいのではないかと思い「竹内離島ライター事務所」みたいなものを本筋で考えていました。

また、「竹内文筆所」みたいな、硬質ながらちょっとオシャレなのも検討しました。

けれども、どれもしっくりきません。

僕は妻と一緒に五島列島に移住して、フリーランスのライターとして独立することをきめましたが、妻は当初、ゲストハウスのような宿を経営したいといっていました。

糸をつむぐように、島の人と島外の人をつなげたい。そんな思いで、宿の名前を「つむぎや」にしようとしていました。

一方で、言葉をつないで文章を作ることも「つむぐ」と表現するので、僕の仕事も「つむぎや」ではないか、二人同じ屋号で起業してはどうか、という話になり、僕もいいなと思ったので決めました。「ことばをつむぐ」って、とってもすてきな表現で気に入っています。妻に感謝です。

このブログで「あれがいいのでは」「こんな考えもあるが」などとさんざん書いておきながら、結局、好きなようにしてしまいました。

屋号って、そんなものなのかもしれませんね。

みなさんにも、のびのび考えてほしいなと思います。

 

 

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