水たまりで土下座する議員 息をのむ支援者 ~新聞は記事にならない話が面白い~

ライター事務所「つむぎや」のアキラ(@510tsumugiya)です。

このコラムシリーズでは、僕が新聞記者時代に見聞きしながら、新聞には載せられなかったエピソードを紹介しています。

新聞に載せられない、記事にならない話こそ、実は面白かったりするんですよね。

今回は、民主主義の根幹をなすともいえる選挙の話。

なかなか「芝居」がうまいセンセイがいました。

衆院選 雨の中の出陣式

衆議院議員選挙の公示日。

たくさんの支援者が見守るなか、ある現職候補者の「出陣式」が開かれていました。

その日は、あいにくの雨模様。支援者も、傘を手にひな壇で次々とマイクを握る応援弁士の話に耳を傾けています。

後援会長などに続き、選対本部長を務める地方議員が登場しました。

地方議員ながら、地元では「ドン」と呼ばれている大物。

国会議員であっても、選挙区が被るドンの応援がなければ、なかなか票を集められないのが実情です。

傘もささずに演説を始めたドン。候補者の実績を語り、若さをたたえ、いかに国政に必要な人材であるかということを、とうとうと訴え続けました。

演説の終盤 水たまりで土下座 目を見張る支持者

そして演説の最終盤。

ドンは「●●先生を、ぜひ国会にもう一度国会に押し上げてください!!」と絶叫したかと思うと、なんと目の前にあった大きな水たまりに飛び込み、土下座したのです。

息をのむ支援者。

「あの大物が!」僕も目を見張ります。

なかなか頭を上げようとしないドン。ズボンも上着も、どろどろ。

大きな拍手の中、ドンは立ち上がって支援者にもう一度深々と頭を下げると、候補者に近寄り固い握手を交わしました。

君、知らないの?

この話には、続きがあります。

候補者を乗せた車が、有権者の待つ市街地に出発した後、選挙事務所で選対幹部と話をしました。

「いやあ、土下座すごかったですね。びっくりしました。まさかあの人が……」

選対幹部が、ん? という表情で僕を見ます。

「君、ここで選挙取材するの初めてか?」

「はい」

「あの土下座、あの人のいつものワザだよ。知らないの? 雨降って、しめた、ぐらい思ってたはずだよ」

「え!」

「ほら、あれ見ろよ」

事務所の向こうで、ドンが新しいスーツに着替えて誰かと談笑しています。

「ちゃーんと替えのスーツ持ってきてるんだよ。車の中に入ってたわ。準備万端だろ?」


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