プレスリリース必勝法② 「記者が嫌うもの」 元新聞記者が解説 広報必読の裏技&ノウハウ

ライター事務所「ツムギヤ」のアキラ(@510tsumugiya)です。

このシリーズでは、新聞記者として働いていた経験をもとに、ふだん公になることのない報道機関と広報マンの裏話をはじめ、記者が記事を「書きたくなる」ための実践的な「裏技」やノウハウ、プレスリリースの基本的な書き方などを紹介しています。

さて、第二回となる今回のテーマは「プレスリリースを扱う記者が嫌うもの」です。

プレスリリースを扱う記者が嫌うもの

1、記者は、プレスリリースが公表される前に、その内容が別のメディアに載ることを嫌う
2、記者は、記事ではなく「タダ(無料)の広告を書かされた」と感じることを嫌う
3、記者は、同じ内容のプレスリリースを何度も送りつけられることを嫌う
4、記者は、プレスリリースが発表された日に「お問い合わせ先」の担当者がいないことを嫌う

 

プレスリリースの具体的な「書き方」を指南するサイトは、たくさんあります。

ですが、記事を書くメディアの記者がプレスリリースを書く際にどんなことを嫌がるのかについて掘り下げたコンテンツは見かけません。

相手(報道機関)のことをよく知らないと、戦略は練れませんよね……。

この回では、プレスリリースをめぐり、ふだん語られることのないメディア側の本音や裏話を中心に進めたいと思います。

まず最初は、これ。

記者は、プレスリリースが公表される前に、その内容が別のメディアに載ることを嫌う

これは実際、ときどきあることです。

たいしたニュースではないけれど、プレスリリースが記者クラブなどで各報道機関に一斉配布される前に、特定の社にだけその内容の記事が先に載る、といったケース。

「たいしたニュースではないけれど」という部分がポイントです。

こうなる原因は単純です。プレスリリースを作った側、例えば企業や団体が、特定のメディアにだけ先に情報を「流す」からです。

ビッグニュースであれば記者がどこからかウワサを嗅ぎつけて「特ダネ」として記事にすることもあります。

ですが「たいしたニュースではない」場合は、記者側に「こんな話があるんだけど、まだどこも知らない話題なんだよね」と持ち込まれるケースがほとんどでしょう。

プレスリリース自体をこっそり先に渡してしまう場合もあると思います。

あそこにだけ記事が載っていて、うちには載っていない。

これは、記事が載らなかった、載せられなかった報道機関側から見ると、非常に腹が立つんですね。

たとえ大きなニュースではなくても、です。

先を越されて、気分のいい記者はこの世にいない 

このシリーズの第一回でも触れたように、報道機関はみな「一般に知られていない話」、つまりニュースを先に記事にしようと必死になって競い合っています。

内容によっては「特ダネ」と呼ばれる非常に価値の高い記事もあり、その記事によって法律が変わったり権力者がその座を追われたりと、時に社会を大きく揺さぶることもあります。

あるメディアにだけ先に載った記事が「たいしたニュースではないもの」、つまりニュース価値がほとんどない新商品・新サービスのような内容であっても、やっぱり腹が立つというか、おもしろくないんですよね。

どんなにささいな話でも、ほかのメディアに先に紹介されてうれしい記者はいません。

断言します。一人もいません。

これは報道機関の本能のようなものです。

両刃の剣 一社にだけは載るけれど……

プレスリリースの内容を特定のメディアに漏らした側の思惑は、報道機関(記者個人)に「おたくだけ先に教えるからさ」と耳元でささやくことで記者の本能をくすぐることにあります。

たとえ一社でもいいから確実に記事を載せてもらいたい、ということが狙いです。

記者も、つまらない話と分かってはいながら「あなたしか知らない話だ」と言われ、自分が真っ先に記事にできるとなれば決して嫌な気はしないものです。

ですが、耳元でささやいてもらえなかったメディアは、こんな風に思うかもしれません。

「ニュースバリューとしては書いてもいいレベルの話だけど、先にあそこに載っちゃったしな。なんか追っかけるようでムカつくから、記事にするのはやめよう。絶対に載せないといけない話じゃないしな

こんな風にへそを曲げるのが普通。僕も、他社の記者がこう話すのをよく耳にしました。

こうなってしまうと本来、複数の社に取り上げてもらえる価値があるプレスリリースだったのに、その芽をわざわざ潰してしまう結果になりかねません。

0か1か 難しい判断

とはいえ、このあたりの判断は非常に難しいです。

一斉にプレスリリースを配布しても、どこも記事にしてくれない可能性もあるからです。

そうであるならば一社でもいいから記事にしてもらいたい……と考えたくなる気持ちも分かりますよね。

そうなると、第一回で触れたように、そのプレスリリースにどれくらいのニュース価値があるのか、客観的に判断できる目が必要です。

どう考えても、どの社も取り上げてくれなさそうな話題であれば特定のメディアにだけ事前に情報を流す作戦が有効かもしれませんし、複数の社が取り上げてくれそうならば特定のメディアに流すことは避けるべきでしょう。

ふつう「おたくにだけ先に教えるからさ」と情報を流したくなる対象のメディアというのは、だいたい決まっていると思います。

新聞社でいうと、知名度のある上場企業であれば日経新聞、地方の中小企業であれば普段からつき合いのある地元紙、あたりでしょうか。

一方で、いくら効果が見込めるとはいえ、特定の社にばかり情報を流していると、他のメディアから「あそこは、A紙にばかり情報を流してムカつく」というレッテルを貼られ、記事にしてもいいようなプレスリリースを無視されたり、記者との関係が悪化する恐れもあります。少なくとも、間違いなく嫌われます。

こうなってしまうと、長い目で見た場合、結局は損になるかもしれません。

少なくともマスコミは敵にに回さないのが得策

報道機関は、やはりそれなりに影響力を持っています。

報道機関との付き合いが欠かせない大企業や有名起業であれば、あえて報道機関を敵に回す必要はありません。

記者だって人間です。仲がいい広報担当者がいる企業や団体のプレスリリースは、やはりよく記事化される傾向があります。

あからさまに頻繁に記事を載せていると何か言われるので、目立たないように間隔をあけたり記事の扱いを工夫したりして、優遇していることが表面化しないように気を配っています。同業者から見れば一発で分かってしまいますが……。

ろくでもない記者も確かにいます。

腹が立つこともあるでしょうが、そんな連中は、仕事だと割り切って「敵でも味方でもない関係」に、ゆるゆると留めておくのがいいでしょう。

余談ですが、よそのメディアに非常にニュースバリューが高い特ダネを報じられることを「抜かれる」と言います。

「抜かれた」後に、その内容を急いで取材して記事にすることを「追っかける」と言います。

「抜かれる」と、非常に悔しい思いをするんですね。抜かれた連中は、よく「こんな記事大したことねえよな。本当に追っかけないといけないのかよ」と抜かれたニュースを軽視しようとする傾向があります。僕もそうでしたが……。

本当に余談でした。

Startup Stock Photo

 

さて、次の「記者が嫌うもの」は、

記者は、記事ではなく「タダ(無料)の広告を書かされた」と感じることを嫌う

あらためてですが、プレスリリースを作って、その内容がメディアに取り上げられるメリットは何でしょうか?

例えば、食品メーカーが新商品を開発したとします。その商品を世の中に周知するだけであれば、広告だけでも十分といえば十分ですよね。

資金が潤沢な大手メーカーであればTVコマーシャル、新聞では全面広告などもバンバン出せるかもしれません。

ですが大手であっても、いえ大手であればあるほど、やはりプレスリリースはきちんと作成して、何とか記事にしてもらおうと報道機関にアプローチをかけてきます。

どうしてでしょうか?

それは、世間では第三者であるメディアが書いた記事は客観的で信頼度が高い、と思われているからです。

信頼度は広告の比ではない

ある企業が、広告で「この分野での技術の高さは日本一!」と訴えても、おそらく信じてもらえません。

ですが、日経新聞の記事にそう書いてあると信頼度がぐっと増しますよね。無条件に信じてしまう人も多いと思います。

インターネットを活用すれば個人レベルでも相当、情報を拡散できる時代になりました。

ですが、トランプ大統領が誕生した米大統領選で「フェイクニュース」が問題になったことからも分かるように、ネットにあふれる情報の中には、信頼度に欠けるものも少なくありません。

民間企業を例に考えてみましょう。

プレスリリースを作る目的は、本音を言えば「信頼性が高く、しかも費用がかからない記事という名の『広告』で商品やサービスをPRしたい」ではないでしょうか。間違いないですよね?

ただ、記者側もそんなことは十分、分かっているわけです。

分かっていながら、ちょっと広告チックな記事を書く際も「いや、おれは『広告』じゃなくて、あくまで世間に『ニュース』を届けているんだ」と自分に言い聞かせながら記事を書いています。常識的な記者であれば。

メディアには高尚な使命があると言われ、確かにその通りとは思いますが、例えばカタいメディアの代表格である新聞社を例にとっても、一皮むけば営利を目的とする商業新聞なんです。

大手スポンサーに「来年度も前面広告の年間契約を結ぶから、この話を取材してくれないか」と言われれば、簡単に断ることはできそうにありません。業界紙であればなおさらでしょう。

こんな「提灯記事」を書かされるとき、記者はとても惨めな思いに駆られます

業界紙では、例えば新商品の取材をする記者に営業マンが同行し、記者の取材が終わった瞬間、営業マンが新商品の広告の話を始めたりします。

記事掲載と広告がバーター、セットになっているわけですね。

媒体にもよるでしょうが、上記のように広告掲載などを交換条件に記事を「書かせる」ことは、実はそんなに難しいことではないかもしれません。

悪く言えば、広告掲載などと引き換えにカネで記事を買う、といった感じでしょうか。

いいか悪いかは別にして、これが現実のビジネスでしょう。

話を持ち掛けるのなら広告担当部署だが……

「カネで記事を書く」ポイントは、編集局に話を持ち掛けるのではなく、広告担当部署に話を持ち掛けることです。

編集局はカネを稼ぐ部署ではないうえ報道機関としてのプライドもあるので事実上、カネで記事を書くような行為は突っぱねます。

個人的には、そうあるべきだと思います。

一方、広告担当部署経由で、うまく記事を載せられたとしても「カネにモノを言わせて記事書かせやがって」と、そのメディアや担当記者と関係が悪化することも十分、考えられます。

搦手から攻められるようなもので、気分がいいことはないでしょう。

いずれいしろ、メリットとデメリットを十分検討したうえでの行動が必要でしょう。どうするかは、あなた次第です。

記者は、同じ内容のプレスリリースを何度も送りつけられることを嫌う

報道機関は、送られてきたプレスリリースはメールであれFAXであれ、記者クラブへの持ち込みであれ、内容を確かめもしないで捨てたりすることは絶対にありません。

もしかしたら、とびきり重大なニュースが書いてあるかもしれないからです。

たまにプレスリリースの書き方を指南するサイトで「報道機関へのプレスリリースは紙が原則」といった内容も見かけますが、もうそんな時代ではないです。発想が古い。

プレスリリースをきちんと報道機関に渡したのに反応がないのは、単に取材する気がないからです。

それなのに、これでもかというくらい、同じ内容のプレスリリースを何度も送りつける人がいます。

メールやFAXを送った後に電話をして、ちゃんと届いているかどうか確認することは問題ありません。

一方的に送りつけるのは失礼だ、という見方もありますし、それくらいの丁寧さは、あっていいと思います。

「記事にならないのは、もしかすると届いていないからではないか」と思い、何度も送っているのでしょうか?

送れば送るほど「いやー、その粘り強さに負けましたよ」と記事になると思っているのでしょうか?

同じプレスリリースを何度も何度も送りつけるのは、相手の不快さをいたずらに高めるだけです。

まったく効果がないので、やめてください。

気持ちは、分からないこともありませんが……。

記者は、プレスリリースが発表された日に「問い合わせ先」の担当者がいないことを嫌う

例えば、ある会社がプレスリリースを作り、ある日どこかの記者クラブや報道機関に一斉配布したとします。

内容的に話題性もあるので、ある報道機関の記者が、さっそく「問い合わせ先」に名前が書いてある広報部門の担当者に電話をしました。

 

記者「本日配布された新商品のプレスリリースで、少し確認したいんですが広報担当の●●さんお願いします」

電話に出た人「●●ですが、あいにく席を外しております」

記者「社内にはいらっしゃいますか? このまま待っていてもいいですが」

電話に出た人「少々お待ちください……。お待たせしました。●●は、あいにく出張しております。二泊三日の予定で、出社は三日後です」

記者「三日後? プレスリリースの報道対応者として●●さんの名前が書いてありますよ? 今日プレスリリースを配布するのに、出張に行ったんですか」

電話に出た人「申し訳ありません」

記者「……では、ほかにこの内容を分かる方をお願いします。上司の方とか、製造部門の方とか」

電話に出た人「あいにく、この商品に関しては●●が担当なので、ほかの者では対応しかねます」

記者「いや、ですからその方が出張だから言ってるんです」

電話に出た人「申し訳ありませんが、どうしようもありません。三日後にもう一度ご連絡ください」

 

コメディーのようですが、こういったやりとりは、実際あります。

まず、プレスリリースを発表した日に、取材窓口の担当者が不在で連絡が取れないのは致命的です。

そんな人の名前は取材窓口として記載しないでください。

トイレや食事で一時的に席を外すことはあると思いますが、「丸一日外に出ていて事務所には戻らない」とか「出張」などは、あらかじめ分かること。

そうであるのなら、別な日にプレスリリースを発表するべきです。

急な出張ならば、代わりの担当者を用意しておく必要があるでしょう。

このように対応がずさんだと「ああ、もういいや!」とせっかく内容がいいプレスリリースなのに、記事になるチャンスを逃してしまう可能性があります。

そうなると、もったいないですよね。

このあたりの感覚は、プレスリリースがどうこうというよりは、一般常識のような気もします。

 

さて、第二回は以上です。いかがだったでしょうか?

「つむぎや」では、プレスリリースに関するセミナーや講演会、勉強会などもご依頼に応じて行っています。

もう一段上の実践的な広報活動を目指したい方は、ホームページトップの問い合わせフォームからご連絡ください。

次回のテーマは「そのプレスリリース、誰に向けて書いてますか?」です。

プレスリリースって言うくらいですから、どこに向けて発信するか分かっているようなものですが……。

実践的な内容です。気になる方は、ぜひ次も読んでくださいね。


併せて読みたい プレスリリース必勝法シリーズ(5回シリーズ)

プレスリリース必勝法① 「ニュースはありますか?」 元新聞記者が解説 広報必読の裏技&ノウハウ

プレスリリース必勝法③ 「誰に向けて書いている?」 元新聞記者が解説 広報必読の裏技&ノウハウ

プレスリリース必勝法④ 「マスコミが好むコンテンツ&キーワード」 元新聞記者が解説 広報必読の裏技&ノウハウ

プレスリリース必勝法⑤ 「マスコミが嫌うコンテンツ&キーワード」 元新聞記者が解説 広報必読の裏技&ノウハウ

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