プレスリリース必勝法① 「ニュースはありますか?」 元新聞記者が解説 広報必読の裏技&ノウハウ

誤った認識、思い込みが氾濫するプレスリリース

ライター事務所「つむぎや」のアキラ(@510tsumugiya)です。

僕は、もともと新聞記者でしたが、40歳で会社を辞め長崎県・五島列島に移住。地域おこし協力隊として活動する傍ら、フリーランスのライターとしての活動を始めました。

新聞記者時代は、企業や団体が広報のため作成した報道発表文「プレスリリース」(ニュースリリース)に目を通す機会がたくさんありました。

プレスリリースというのは、言い換えれば「報道機関のみなさん、こんな話があるんですが記事にしてくれませんか?」という依頼文。

記者の担当分野にもよりますが、僕の場合、多い日で一日に20~30枚ほど目を通していました。

民間企業の方であれば、新商品や新サービスに関するリリースを作る機会もあると思います。

当時、誤った認識や思い込みで作成された違和感のあるプレスリリースに出くわす機会が結構、ありました。

一見うまく書けているようでも、記事を書く側の「書き手目線」に立たないと分からないこと、気が付かないことはたくさんあります。

ネット上にはプレスリリースの「書き方」を指南しているサイトがあふれていますが、残念ながら「書き方」が上手になることと、報道機関に取り上げてもらう機会が増えることは別の話。

もちろん、体裁を整えることも必要ですが、もっと実践的なことや、知っておくと得する「裏技」の類はたくさんあります。

このシリーズでは、ふだん公になることのない報道機関の裏話をはじめ、記者が記事を「書きたくなる」ためのノウハウやプレスリリースの基本的な書き方、さらに実践的な技術を僕自身の経験をもとに紹介したいと思います。

業界人の本音や、きれいごとではない裏話も盛り込んであります。

企業や団体で広報に携わる方は、ベテランの方でもきっと目からウロコな情報も。単なる読み物としても、楽しめると思います!

そのプレスリリース 「ニュース」はありますか?

プレスリリースは、ニュースリリースという別名もある通り、「ニュース」つまり「世間一般に、あまり知られていないこと」を発信するものです。

ものすごく当たり前のことなんですが、この大前提を理解していないリリースは非常に多いです。

少し大げさに言えば、その話を聞いて「聞いたことがない!」「なんておもしろいんだ!」と新鮮な驚きをもたらすものがニュース。

そう考えると、おのずと「プレスリリースとは何を発表するべきものなのか」が分かりますね。

単に「新しい商品を作りました、新しいサービスを始めました、別に珍しくもないし面白くもないけれど、うちとしては新しい取り組みだし、とりあえずプレスリリースをつくりました、上司も頑張ってPRしてこいって言ってますし、だから記事にしてください」などと言われても困ります。

なのに、そんな感じで何気なく作られたプレスリリースは非常に多いです。

重要なのは「書き方」ではない

そもそも論になってしまいますが、とても大事なことなので、きちんと書いておこうと思います。

プレスリリースで一番大事なのは「書き方」などではありません。プレスリリースで発表する内容です。

そんなこと言ったら、元も子もないじゃないか、と思われるかもしれませんが事実です。

残念ながら、ニュースのないリリースを数撃っても当たりません。

うんこをよく磨いても、よく磨かれたうんこにしかならないのと同じです。

中身のないプレスリリースは、どんなに素晴らしい文章で書いても、内容が良くなるわけではありません。

とはいっても記者も人間。「裏技」がないわけでは……

プレスリリースは中身がすべて。そう断言しましたが、実はまったく「裏技」がないわけではありません。

ここからは、本当に実績を残したい広報マンを目指すなら、ぜひ知っておいていただきたいテクニックをご紹介します。

プレスリリースの「書き方」からは少し離れますが、それ以上に重要なテクニックです。

まず、あらためて思い出していただきたいのが、報道機関は「ニュース」を書くのが仕事だということ。

ニュースというのは、つまり新しい情報でしたね。報道機関の記者は、世間一般に知られていない話を、だれよりも先に書くため日々、汗を流しています。

報道機関の記者同士は、記者が拠点として使う「記者クラブ」に集まって雑談したり、夜は一緒に飲みに行ったりもしますが、結局のところみなライバルなんですね。

まずこのことを理解してください。

「優秀」な広報マンとは

さて、ある大企業がプレスリリースを作り、記者クラブに現れて報道各社にリリースを配ったと仮定します。

その大企業の有能な広報マンと敏腕新聞記者の間では、こんな会話がありそうです。

 

広報マン「ねえ記者さん、この新商品なんとか記事になりませんか? 目新しくもない商品なんですが、製造部長が何としても新聞に載せろ!ってうるさいんですよ。部長ににらまれると、僕も次の異動でどうなることか……」

新聞記者「立場はわかりますけどね、こんなどこにでもある商品、記事になりませんよ。……あー、ところでね、チラっと小耳に挟んだんですが、おたくの会社、中国から撤退する方針らしいですね。工場も全部閉鎖して、現地作業員も数千人単位でクビにするとか。本当なのかなー。いつ頃なんだろうなー。特ダネになりそうなんだけどなあ……」

広報マン
「……。その話、本当に初耳なんだけど……。んー、でも、独り言ですがねえ、もしこの新商品の記事が御社の新聞にでも載ったら、仲のいい上司にさりげなく聞いてウラ取ってあげてもいいかな……」

新聞記者
「その新商品、よくよく考えると面白いかもね! ぜひ明日の紙面に載せたくなってきましたよ! 写真も載せようかな! その新商品のプレスリリース捨てちゃったから、もう一回ちょうだい!」

 

いいか悪いかは別として、有能?な広報マンの中には、記者に代わって情報を集めてくれる人がいます。

こちらから聞きもしないのに、「こんな話知ってる?」と耳打ちしてくれる人もいます。

記者にこっそり情報提供していることを、同僚にすら話さない人もいます。

世の中、しょせんギブ&テイクなんですね。

何かを得るには、何かを差し出さないといけない。等価交換の法則です。

相手にもよりますが、ビジネスの世界では、たとえば顧客から契約を取るためには、頭を下げたり誠意を示すだけでは限界がある、ということも多いですよね。

ひたすらお願いすれば何でも言うことを聞いてくれる仏さまのような人は、そうそういません。

相手がほしがっているもの、報道機関でいえば「情報」を提供することは非常に効果的です。

顧客を飲み屋に連れて行って、高いカネを払って飲みたくもない酒を夜遅くまで付き合うよりは、よほど楽だと思いませんか?

別に、法に触れるようなことまでしてください、と言っている訳じゃないんです。そのあたりは、ご理解ください。

会社や株主に大きなダメージを与えるような内容もマズいでしょう。

記者時代の経験から言うと、いずれにしろ情報というのはどこからでも漏れるものですが……。

僕が記者のときは、同じ業界の会社がA、B、Cとあったとして、A社の人にB社、C社の噂話を聞いたりしました。A、B、C社は、社は違えど同じ業界なので、ライバル関係にあってもやはりそれぞれの社の話はいろいろ耳に入ってくるものです。

A社のナイショ話をB社の人に聞いて、その話をC社の人にそっと流して、それを「エサ」に仕入れた話をまたB社の人に聞いて……と情報をどんどん転がしたりしました。

そうすると、雪だるま式に情報がどんどん膨らんでいき、情報をたくさん入手することができました。

ギブ&テイクなのは、広報マンも記者も同じですね。記者だって、広報マンに頼まれて、情報を探って流すこともあるということです。

ただし、上記のように記者に対して情報を流す「裏技」が可能なのは、ある程度ふだんから記者と付き合いがあったり、記者が関心を持っているような有名企業の情報などを知りうる立場にある広報マンに限られるでしょう。

だれも知らない町工場が事業拡大する話は、地域の話題にはなっても「ニュース」にはならないからです

それでは、裏技とは縁が遠い広報マンは、どうすればいいのでしょうか? ここからは、少し正統法を説明したいと思います。

発表前に、まずはニュースバリューを客観的に判断

プレスリリースは、発表する内容が決まってからつくるものです。当然ですね。

言い換えると、プレスリリースの中身の「骨格」は、変えようがないということです。

発売する商品がつまらないからといって、勝手に面白い話を書き加えて架空の商品をでっちあげるわけにもいきません。

では、どうすればいのでしょうか?

その問題を掘り下げる前に、ひとつ確認しなければいけないことがります、それは発表前のプレスリリースの原案を冷静な目で見て、客観的に価値を見極めることです。

広報マンの手腕が問われるのは、原案がダメなプレスリリース

この話を読んでいる方は、おそらく企業や経済団体の方も多いと思うので、経済分野を例に話を進めたいと思います。

記事を書いてほしいメディアは、比較的記事化へのハードルが高く速報性も重視している新聞社やテレビ局、通信社を想定しました。

記者はプレスリリースに目を通す際、自らの経験と知識を元に、そのリリースを頭の中で分類しています。

具体的には、

1、何があっても、すぐ記事にしないといけないもの
2、すぐ記事になるか分からないが、取材はしないといけないもの
3、記事にしても、しなくてもいいもの
4、記事にする必要性が感じられないもの

です。

広報の方は、プレスリリースの原案が出来上がった段階(報道機関に発表する前)で、そのプレスリリースが上記1~4のどれに分類できるか冷静に判断してください。

「1、何があっても、すぐ記事にしないといけないもの」「2、すぐ記事になるか分からないが、取材はしないといけないもの」だと判断した場合、そのまま発表しましょう。特に汗を流す必要はありません。

広報担当者の腕が試されるのは「3、記事にしても、しなくてもいいもの」「4、記事にする必要性が感じられないもの」の二つです。

1~4を、それぞれ詳しく解説していきます。

まず1,2から。

ある意味デキが悪くても大丈夫

「1、何があっても、すぐ記事にしないといけないもの」は、例えば大銀行が合併する方針を固めたとか、次に発売されるiPhoneが世界初の新技術を導入する方針だとか、そんな内容でしょうか。

これくらいのレベルになると、発表する側もプレスリリースを作成・配布するだけではなくて、記者会見を伴うことがほとんどです。

発表側が公表したくない不祥事などの案件も多いでしょう。

「2、すぐ記事になるか分からないが、取材はしないといけないもの」は、ニュース価値がそれなりに高い話題で、一般的にはすぐ報道した方がいいけれど、その報道機関のカラーや編集方針にそぐわなかったり、その日はもっと重要なニュースがほかにたくさんあったりして(新聞でいえば紙面が「きつい」、TVであればニュースの放映時間枠が足りない)どうなるか分からない場合です。

報道機関の方針によっては、絶対的なニュースバリューはあるのに、あえて無視したり扱いを極端に小さくする、といったことはよくあります。

原稿の扱いをめぐって編集局が迷走することもあり、記者個人のレベルでは判断できないこともあります。急に原稿が必要になった時に備え、記者は取材だけは済ませておきます。

いずれにしても、このケースは基本的にニュース価値が高い話。すぐ記事にならないというだけで、心配はいりません。

広報担当者は、それぞれのメディアの特色(右寄り、左寄り、ある分野の記事化に対して慎重・積極的等)やその日あった主なニュースなどを頭に入れておけば、記事化されなかった理由が判断できるようになるでしょう。

どうしても記事化されなかった理由が分からなかった場合は、担当記者に「昨日のあのプレスリリース、おたく載らなかったのどうして?」と聞いてしまいましょう。隠すほどの理由はないはずなので、ある程度の関係を築いていれば教えてくれるはずです。

まとめます。

1、2の項目に関しては内容が優れているので、ある意味どんなに出来が悪いプレスリリースをつくっても大丈夫。

書くなと言っても、記者が一生懸命取材して勝手に記事にしてくれるはず。広報マンが見せ場を作る場面はありません。

逆に上記「3、記事にしても、しなくてもいいもの」「4、記事にする必要性が感じられないもの」こそが、広報マンの手腕が問われるケース! 詳しく解説してみましょう。

ニュースがなければ、無理矢理でも?価値を掘り起こそう

まず、アイスクリームメーカーが新商品を発売するケースを想定してみます。

仮に「シャリシャリ君」という人気シリーズがあったとします……。

「シャリシャリ君、夏場三カ月間の期間限定で1本100円→50円に」のニュースバリューはどうでしょうか。

うーん、これは微妙ですね。昨今、1本50円のアイスなど見かけることはありませんが、ニュース価値は意見が分かれそうです。

1本1円であれば、文句なく記事になるでしょうが、50円という値段は半額とはいえいかにも中途半端……。

記者の好みもあるでしょう。まさに上記分類3の「記事にしても、しなくてもいい話」です。

「シャリシャリ君にチョコレート味登場」はどうでしょうか。

ニュースバリューは、ほぼゼロですよね。上記の分類でいえば4。逆に、チョコレート味すらなかったことがニュースかもしれません。

さて、この価値が低い2本のプレスリリースに対し、広報担当者ができることは何でしょうか?

プレスリリースの「骨格」に手を付けられない以上、できることは一つ。

「骨格」以外の部分で面白い部分を掘り起こし、ニュース的な価値を少しでも上乗せする努力をするしかありません。

例えば、アイスの開発担当課に赴いて開発の経緯を詳しく聞いてみるのはどうでしょうか。

なぜ50円なのか詳しく聞けば、ユニークな話を掘り出せるかもしれません。

表向きは長年シャリシャリ君を支えてくれたファンの方へ感謝を込めて、でしたが、よくよく話を聞くと社長が目に入れても痛くない孫に実は「50円にして」とおねだりされたからとか、他界した創業者の遺言に「発売50年目には価格を50円にしないさい」と書いてあったからとか、なにかユニークな「物語」があるかもしれません。

「チョコレート味登場」に関しては、実は40年前から開発に着手していたけれど、社長が味に納得せずOKが40年間でなかったとか、実は以前チョコ味があったけれど発売と同時に経営危機に陥った黒歴史があり、長年封印していたとか……。

これらの例のようなユニークな話は、なかなかないとは思いますが、チャレンジしてみる価値はあります。

どうしても見つからなければ、後付けでもいいので何か「物語」を作れないか知恵を絞ってみましょう。そこが勝負の分かれ目となります。

1,2のようなプレスリリースは淡々とつくり淡々と記事にしてもらって、3,4のような「問題児」のブラッシュアップにエネルギーを使いましょう。

そうすれば歩留まりは確実に上昇するはずです。

仮にうまくいかなくても、もともとどうしようもないプレスリリース。だれも文句は言わないでしょう。

ですが、本来ならお蔵入りが相当だったプレスリリースが広報マンの腕力で記事になったとすれば、広報マン冥利につきるのではないでしょうか?

 

さて、第一回は以上で終わりです!

いかがだったでしょうか?

プレスリリースの、いわゆる「書き方」の技術はありませんでしたが、書き方を学ぶ前に知っておくべき、より実践的なテーマを取り上げました。

「つむぎや」では、プレスリリースに関するセミナーや講演会、勉強会などもご依頼に応じて行っています。

もう一段上の実践的な広報活動を目指したい方は、ホームページトップの問い合わせフォームからご連絡ください。

次回のテーマは「プレスリリースを扱う記者が嫌うもの」です。

記者が嫌がることを知れば、おのずと戦い方も分かってきますよね! 今回の内容に価値があると思っていただけた方は、ぜひ次も読んでください。


併せて読みたい プレスリリース必勝法シリーズ(5回シリーズ)

プレスリリース必勝法② 「記者が嫌うもの」 元新聞記者が解説 広報必読の裏技&ノウハウ

プレスリリース必勝法③ 「誰に向けて書いている?」 元新聞記者が解説 広報必読の裏技&ノウハウ

プレスリリース必勝法④ 「マスコミが好むコンテンツ&キーワード」 元新聞記者が解説 広報必読の裏技&ノウハウ

プレスリリース必勝法⑤ 「マスコミが嫌うコンテンツ&キーワード」 元新聞記者が解説 広報必読の裏技&ノウハウ

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