「深い話を相手から引き出す達人」との出会い ライターも活用できる技 ~新聞は記事にならない話が面白い~

「深い話を相手から聞き出す達人」との出会い

ライター事務所「つむぎや」のアキラ(@510tsumugiya)です。

この「新聞は記事にならない話が面白い」コラムシリーズでは、僕が新聞記者時代に見聞きしながら、新聞には載せられなかったエピソードを紹介しています。

今回は、深い話を相手から聞き出す達人に会った話。

もう20年ほど前の話ですが、とても驚いた記憶があります。

初対面なのに、いつの間にか僕もその人に「深い話」をしていたので……。

ライターなど、いろいろな職業の方も活用できる技だと思います。

薬物依存から脱却を目指す団体 ムキムキな代表者

その男性は、ムキムキな体をしていた。

いったい何を見てきたのか、暗いいろをした目が印象的だった。

男性は、薬物依存からの脱却を目指す人を支援する民間団体の代表。自らも薬物依存の過去を持っていた。まだ若く、30歳ぐらいだった。

「すごい体ですね」太い二の腕を見ながら話しかけた。

「いや、何かを始めると、とことんやっちゃうんですよね……。もう体がボロボロになるまで筋トレしてしまうんです」

男性は苦笑いした。依存症と何か関係があるようだった。

カバンからペンとノートを取り出し、取材を始めた。

回復プログラムは、依存症患者がお互いに話をするだけ

薬物依存症から脱却するために、その団体が行っているプログラムを尋ねた。

「みんなで一緒に話をするだけですね。自分がどうして依存症になったのかとか、当事者同士が話し合うんです」

「グループミーティングみたいな感じですね。ほかには?」

「それだけです」

「それだけですか? みなさん、簡単に自分のことを話すんですか?」

「そうですね、話しますね」

「本当ですか?」もっとみっちりとしたプログラムがあると思っていたので、少し拍子抜けした。

依存し続けた人生 男性は自らの過去を語り出した

「僕の場合なんですが、子どものころパニック障害になって、それから……」

男性は、おもむろに自分がどうして薬物依存に陥ったのか話し始めた。

性やギャンブル、薬物……。さまざまなものに依存し続け、どん底を見た壮絶な過去を聞いた。

男性は、初対面の僕に対し、すべてを包み隠さず話しているようだった。しかもこちらは記者。聞いた事は基本的に書きますよ、と事前に断ってある。

話を聞いているうちに、不思議な気持ちになってきた。

なぜか僕も、自分のことを無性に話したくなった。当時、まだ20代だったが、それなりに、それなりのことも経験していた。

「実は僕、昔……」

気が付くと、男性に自分のことを話し始めていた。人にあまり話したことがないようなことまで口にしていた。

自分の心をさらけ出す そうすれば相手も

「不思議ですね。気が付いたら、僕も自分のことをこんなに話してしまいました」僕が、いやあという顔をすると、男性はにっこり笑った。

「あなたが自分の話をしたのは、私が自分をさらけ出したからです。私は、隠したいような自分の過去もすべて話しました。そんな話を聞いてしまうと、人は自分の話もしたくなるんです」


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