企業再生を擬似体験 「あるある!」が止まらない ―「V字回復の経営」―

学びがあり疑似体験にも心奪われる

ライター事務所「つむぎや」のアキラ(@510tsumugiya)です。

僕は、子どものころから本を読む習慣があります。

きっかけは、母が読書好きだったから。自宅にはたくさん本がありました。

もう他界しましたが、母はずっと難病を患っていた関係で、読書ぐらいしかできることがありませんでした。

小学校低学年のとき「これを読みなさい」と井上靖の「しろばんば」を母親から手渡された記憶があります。

いや、いくら名著でも8歳や9歳で理解できる本じゃないだろう……、と今になって思います。

僕が今も本を読み続けている理由、というか、本を読む楽しさは二つあります。

一つは、学びがあるから。
もう一つは、本の世界を擬似体験できるから。

「V字回復の経営」(三枝匡著)は、この二つの欲求を十分に満たしてくれる優れた本です。

よくある企業モノとは一線を画する

作者の三枝さんは、業績不振企業の再建を請け負う「ターンアラウンド・スペシャリスト」。

いわゆる「企業再生請負人」ですね。業界では有名な方のようです。

内容は、三枝さんが実際に手がけた案件の実話をベースにした企業再建モノ。コマツグループの「コマツ」と「コマツ産機」がモデルとなっています。

大手企業のどうしようもない赤字部署の再生に、グループ子会社で実績を上げた人物が抜擢され再建に成功する―というストーリー。

これだけ聞くと「なーんだ、よくある経済小説じゃないの?」と思うかもしれませんが、読み出すと手が止まらなくなります。

2001年の発売なんですが、まったく古さを感じさせません。

会社や組織が抱える課題や問題点って、いつの時代も変わらないんでしょうね。

僕は深夜に出港する船の中で読み始めたんですが、おもしろすぎて船が目的地に到着する早朝まで読んでしまいました……。

学びの喜びがある

企業再生に取り組む中核メンバーの動きを中心に物語は進みますが、要所要所で小説視点を離れ、不振事業でよく見られる「症状」や、企業再生を成功に導くための「要諦」の解説文が差し込まれています。

まず、この解説文が秀逸なんですね。さすが企業再生の実績がある作者です。

欧米的な経営理論も引用されますが、それをいかに日本の企業風土に落とし込んで取り組むべきかが書いてあります。

机上の空論ではなく、自ら再建に取り組んだ際の経験を元にしているので、現場特有の息遣いのようなものが感じられるんですよね。

上から目線の堅苦しい理論を書き連ねるページはありません。

小説を読んでいるはずなのに、いつのまにかどぶ板的な視点で経営改革論を学べるところが秀逸です。

既視感があるから疑似体験しやすい

僕もフリーライターになる前は、会社勤めをしていました。

きっとこのブログを読んでいる皆さんも、ほとんどがサラリーマンかサラリーマン経験者ですよね。

だから企業を舞台にしたこの小説は、既視感があって面白いんだと思います。

読み進めると「あー、こんな奴、うちの会社にもいる!」「この組織のヤバい感じ、わが社にもぴったり当てはまるな」と、至る所で「あるある!」があるんですね。だから疑似体験、感情移入しやすいわけです。

話の中で、組織の膿が出されたり、ひねくれた社員が一喝されたり、苦難を乗り越え目的を達成できたりすると、登場人物と一体となって手に汗握ったり喜びを共有しているような気持ちになれます。

ほかの人のレビューを読んでいると、「経営者必読の書!」といった評価をよく目にしますが、僕は普通の平社員であっても、楽しめて学べる内容だと感じました。

ぜひ覚えて欲しいポイント

小説の中で「不振事業の症例50」と「改革を成功に導くための要諦50」が紹介されていますが、大変ためになるのでいくつか紹介したいと思います。

・不振事業の症例
「組織に危機感がない」
「組織に『政治性』がはびこっている」
「個人として『赤字の痛み』を感じていない」
「組織末端のあちこちに一種の被害者意識が広がっている」

・改革を成功に導くための要諦
「計画を組む者と、それを実行する者は同じでなければならない」
「人々に『強烈な反省論』を迫るには、徹底的な事実・データに基づく追い込みが不可欠」
「特定の個人や部署を責めずに、古いシステムの問題点をクールに指摘し続ける」
「『気骨の人事』の実現は、企業トップがその改革に本気かどうかの踏み絵になる」

この本は、小説であり経営指南書でもあります。

まだ読んでいない人がうらやましいな、とさえ思います。

2013年に出版された増補改訂版では、登場人物のモデルとなった鈴木康夫氏のインタビューも載っていますよ!

日本能率協会コンサルティング(JMAC)のサイトでは、鈴木氏さんのコラムが掲載されています。ご参照ください。


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